栄養士として働いている方の中には、現場を離れている期間があり、仕事で必要のない知識についてはすっかり忘れている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、そんな方々に向けて栄養の基礎知識について専門的かつ出来るだけ分かりやすく噛み砕いて解説しています。
この記事では
・栄養についての基礎知識
・基本的な栄養素について役割や効果について
・栄養バランスの良い食事
についてご紹介します。
ぜひ、栄養の勉強を始める際の導入としてお使い下さい。
栄養士が知るべき栄養の基礎知識
栄養とは?
栄養とは、食事によって栄養素を摂取し、それを使って身体を構成・維持したり活動することです。
食事は栄養素を摂取するだけでなく、料理を楽しむことにより日々の疲れやストレスを癒したり、大切なコミュニケーションの場でもあります。
消化と吸収・代謝
消化・・・摂取した食べ物を消化器官で分解すること
吸収・・・消化器官から体内に取り込まれること
代謝・・・吸収された栄養素を体に必要な物質に生成すること
ごはんを例に解説すると、ごはんを食べるとまず歯でごはんを細かく噛み砕き、唾液アミラーゼによってでんぷんを分解します。唾液アミラーゼを多く分泌させるためにはよく噛むことが大切です。その後、食道、胃を通って十二指腸で膵液アミラーゼによってさらに分解、最終的にブドウ糖となり、小腸の粘膜の上皮細胞から吸収されます。
唾液アミラーゼや膵液アミラーゼのように食べ物を細胞や血液に吸収できるまで分解する役割をもつのが消化酵素です。吸収されたブドウ糖は肝臓に取り込まれ、血糖として各組織に送られてエネルギーとなります。
まずはこれを覚えて!5大栄養素について
5大栄養素とは、たんぱく質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラルのことです。
5大栄養素には
・エネルギーのもとになる(たんぱく質・炭水化物・脂質)
・からだをつくる(たんぱく質・ミネラル)
・からだの調子を整える(ビタミン・ミネラル)
以上の役割があり、人の体内で作る事が出来ず、生きていく上で無くてはならない栄養素です。
たんぱく質
臓器や筋肉など体を作る材料となる栄養素です。
消化されるとアミノ酸に分解され、筋肉や臓器、ホルモンや酵素などをつくる材料になったり神経伝達物質やビタミンなどのもとになります。
たんぱく質を構成するアミノ酸は20種類あり、体内で合成出来るアミノ酸を非必須アミノ酸、体内で合成できない9種類を必須アミノ酸と言います。
〈必須アミノ酸〉
イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジン
〈非必須アミノ酸〉
チロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニン
炭水化物
炭水化物は糖質と食物繊維の総称です。
糖質は体内でブドウ糖に消化され、脳をはじめ身体を動かすエネルギー源になります。
食物繊維は人の消化酵素で消化できない栄養素で、水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維に分類されます。食物繊維は生活習慣病の予防や腸内環境を整える効果を期待できます。
脂質
脂質は効率の良いエネルギー源となり、神経組織、細胞膜、ホルモンなどを作るのに欠かせない栄養素です。脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きもあります。とりすぎてしまった脂質は中性脂肪として主に脂肪細胞に貯蔵されます。
ビタミン
ビタミンは体の機能を正常に保ち身体の調子を整える有機化合物です。水に溶けやすい水溶性ビタミンと油に溶けやすい脂溶性ビタミンに分類されます。
水溶性ビタミン・・・ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン
パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンC
脂溶性ビタミン・・・ビタミンA、D、E、K
ミネラル
ミネラルは、体を構成する主要な4元素、酸素、炭素、水素、窒素以外の総称で、ある程度の量が必要な主要ミネラルと、少量で良い微量ミネラルに分かれます。ミネラルが不足すると欠乏症や不調が起こりますが、摂りすぎも過剰症や中毒を引き起こす可能性が高いです。
〈主要ミネラル〉
カルシウム、リン、カリウム、硫黄、ナトリウム、マグネシウム、塩素
〈微量ミネラル〉
亜鉛、クロム、セレン、鉄、銅、マンガン、モリブデン、ヨウ素、コバルト
栄養を意識したバランスの良い食事とは?
ライフステージ別、必要な栄養素や食事のポイント
バランスの良い食事とは、必要なエネルギーや栄養素が適切な量摂取できる食事のことです。ライフステージによって必要な栄養素や食事のポイントも異なってきます。
乳児期(0~1歳未満)
乳児期は母乳やミルクから離乳食を通して幼児食に移行していきます。月齢や年齢だけで段階を進めるのではなく、その子の咀嚼や食への興味に合わせて離乳を進めていくことが大切です。離乳は乳児の成長のための栄養を食事から摂るためだけではなく、味覚や口腔機能の発達のためにも必要になります。はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため、満1歳までは使用しないようにしてください。
幼児期(1~5歳)
幼児期は様々な種類・固さ・形状の食材に触れることで噛む力や味覚を育てます。また、箸の使い方や食事のマナーを身に付けることも大切です。特に必要な栄養素は骨や歯の成長に必要なカルシウムやビタミンⅮ、体をつくるのに必要なたんぱく質、脳などの中枢神経の発達に必要な鉄です。1日3回の食事だけだと必要量に比べて食べれる量が少ないので間食が必要となります。間食は甘いお菓子ではなく、ビタミン豊富な果物やすぐにエネルギーとなるおにぎりなどがオススメです。
学童期(6~11歳)
学童期は全身の骨格が成長し、活発に運動するようになるため、エネルギー代謝が増えて食欲旺盛になります。成長期の子どもには体を作るタンパク質や丈夫な骨や歯を作るカルシウムは不可欠です。特にカルシウムはこの時期に骨へのカルシウム蓄積量を増やすことで骨粗鬆症のリスクを軽減する効果が期待できます。
また、学童期は食生活や食習慣が確立される時期です。よく噛む習慣や朝ごはんを食べる習慣など正しい生活習慣を身に付けていくことを大切にしましょう。
思春期(12~18歳)
思春期は必要なエネルギー量が最も高い時期です。また、著しい体の成長や女子の場合は月経のため、体内の鉄が不足しやすくなります。欠食や偏食、食欲不振などによっても貧血状態になるので、意識的に鉄の多い食品の摂取が必要です。
女子においては痩身志向がみられる時期で、ダイエットのために食事量を減らしたり、欠食をすると必要な栄養素が不足し、貧血や体力低下、食欲不振、月経異常を引き起こすこともあります。間違ったダイエットの危険性を知り、バランスの良い食事の摂取が大切です。
思春期は生活習慣の自立により、自ら選んで食事をする機会が増えます。そのため、自分の好きな食べ物が中心になりやすいです。
栄養不足やバランスの偏りによって発育不足になると、将来の健康にも悪影響を与えます。バランスのよい食事を規則正しく取り、カルシウムやタンパク質、ビタミン、鉄などが不足しないよう、正しい生活習慣を身につけていきましょう。
成人期(19~64歳)
成人期とは、青年期・壮年期・中年期の総称です。
青年期(18~29歳)は身体発達がほぼ完了し、保護者から自立して生活習慣や食習慣を自分で管理するようになります。食生活が乱れやすく、外食や中食の利用増加、朝食欠食、食事時間の乱れなどが起こりやすいです。ビタミン、ミネラル、食物繊維などが不足しやすい食生活と運動不足やストレスによって肥満や生活習慣病の素をつくります。
また、若い女性の多くはやせ願望があり、偏った食事によってエネルギー、たんぱく質、カルシウム、鉄などが不足しやすいです。骨量や筋肉量の減少、貧血、ホルモンバランスの乱れなどを招くため、バランスの良い食事を意識し、適正な体重を維持しましょう。
壮年期(30~49歳)と中年期(50~64歳)は身体機能が徐々に低下し、それまでの生活習慣によって糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を招きやすくなります。この時期に生活習慣病を予防し、適切な栄養管理と運動習慣も身に付けることが大切です。
身体活動量は年齢とともに低下するので、エネルギーや脂質、食塩の摂りすぎに注意が必要です。たんぱく質やカルシウムなどは意識的に摂りましょう。
外食や中食は炭水化物や脂質に偏りやすく、食塩の取り過ぎになりやすいです。食塩の摂取を抑え、カリウムの多い野菜や果物などを積極的に取るように心掛けましょう。
お酒は適量を守って摂取することが大切です。おつまみはエネルギーの摂りすぎに注意し、良質のタンパク質がとれる主菜やビタミン、ミネラルが豊富なものを選ぶようにしましょう。
女性は40代後半から更年期を迎えます。更年期になると骨量減少が急激に進むため、カルシウムとビタミンⅮの摂取が特に重要です。牛乳・乳製品や大豆製品、緑黄色野菜などを積極的に摂りましょう。
高齢期(65歳以上)
高齢期は生活習慣病の発症と重症化の予防、合併症がある場合はエネルギーや食塩、脂質などの食事コントロールが必要です。また、骨量や筋肉の減少、体力低下の予防のためにカルシウムやたんぱく質を積極的に摂るようにしましょう。
高齢になると味覚が鈍くなり、濃い味つけを好むようになります。高血圧予防のため、薄味を意識しましょう。食事全体が薄味であっても一品だけは濃いものにすると満足感が得られるのでオススメです。
年齢が進むと咀嚼機能や嚥下機能、身体機能の低下により食事量が減少しやすくなります。食事量が減少すると低栄養になり、体重減少や骨格筋の筋肉量や筋力の低下が起こるため、食事を楽しみながら必要なエネルギーや栄養素を摂取することが大切です。
味付けや見た目を変えて食欲を増やす工夫をしましょう。コショウやカレー粉などの香辛料や薬味を使って胃液の分泌を促すこと、季節を感じる食材を使ったり盛りつけをこだわることが効果的です。咀嚼機能や嚥下機能の低下には、個人に合わせて食品を軟らかく調理したり、小さく切るという工夫が必要です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、
・栄養素が体に入ってどのように使われるのか
・5大栄養素とその働き
・ライフステージ別の食事ポイント
について解説しました。
栄養の基礎知識を学び直すことで、より深く栄養素について理解できます。
ぜひ、参考にしてください。
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